原題: Whiplash
ビックバンドが好きならこれは観ないと。
それも音の良い映画館で観たら最高でしょう。
原題の『 Whiplash 』を邦題の『 セッション 』としたのは、さすがというか日本的です。
日本語に翻訳したら 鞭打ち ですからね。
シゴキ をイメージしてくれれば良いのですが、性的嗜好と捉える人もいるかもしれません。
原題の『 Whiplash 』は、ビッグバンド曲で、難曲として知られています。
ひとつの曲の中で、何度も何度もテンポが変わり、演奏者達を惑わせる曲です。
この映画の中でも何度も演奏されていますが、 主人公 アンドリュー・ニーマン と テレンス・フレッチャー の関係性がテンポが変わりズレが生じたり、ガールフレンドや周囲との関係性のズレが生じて衝突したり、ニーマンやフレッチャーの人生のテンポが変わり上手くいかなくなったりする 不協和音 を、映画のタイトルにしていました。
まぁ、日本では、アメリカほどのジャズ人気がありませんから意味は伝わらないだろうし、結論好きの日本人には合うのかもしれません。ラストシーンは、 『 セッション 』の方がしっくりきますからね。
英語で最悪の言葉は『 Good Job 』
その意味は、この映画を最後まで観たらわかるかもしれません。
音大に通う生徒は、地元では天才演奏者と子供の頃から言われていた人間の集まりです。
地元の天才を寄せ集めたら、ほとんどの人がただの人になり、その中でも抜きん出る人がいます。 年に数人。
子供の頃から天才ドラマーと言われていたアンドリューは、アメリカNo.1の音大、シェイファー音楽学校へ進学した。
このままトントン拍子に、偉大な音楽家になれるものと思っていた。
ある日演奏な授業中に、学園内で最高の指揮者フレッチャーが、バーンと扉を突き飛ばして入ってくる。
楽器パート毎に演奏をさせて、音を確認します。 全米一の音楽大学のNo.1バンドのメンバーになれれば、最高の名誉ですからバンドメンバー全員がピンと張りつめた空気の中演奏します。
ドラムパートの順番になって、主演奏者が演奏した後、アンドリューに演奏するようにフレッチャーが指示します。
バンドメンバー20人の演奏者の中で、フレッチャーが選んだのはドラムスでした。
ドラムの主奏者が立ち上がると、フレッチャーは、お前ではなくアンドリューだと言います。
茫然とする主演奏者の表情、その背中越しにアンドリューの得も言われぬ表情。
ここから彼の音楽人生の方向性が決まります。
フレッチャーの指揮するバンド『 スタジオ・バンド 』にも、ドラムの主演奏者がいて、セカンドは主演奏者の譜めくり役です。
そこでも主演奏者を巡る争いがあり、アンドリューが主演奏者に昇格しても、新たにドラムスが加入して、主演奏者の地位を脅かします。
ここから物語は転換して、後半、そしてエンディングになるのですが、あれ?という終わりかたの割に、観終わった後の爽快感が悔しいほどあるのは、それだけ映画にのめり込めていたからでしょうか。
楽器を投げつけたり、ぶっ壊したりするミュージシャンは嫌いなので、物語だと分かっていても不愉快でしたが、 J・K・シモンズ があまりにも良くて、そんなことどうでもよくなりました。
性格破綻者の指揮者 テレンス・フレッチャー 役は、『 スパイダーマン 』シリーズ、 『 マイレージ・マイライフ 』『 スティーブ・ジョブズ 』『 Re:LIFE〜リライフ〜 』の J・K・シモンズ 。 頰の動きのアップだけで心情、その場の空気を伝えられる名優です。
主役の アンドリュー・ニーマン は、 フットルースのリメイク『 フットルース 夢に向かって 』の マイルズ・テラー 。
監督と脚本は 『 ラ・ラ・ランド 』の デイミアン・チャゼル 。
音楽がテーマの映画が得意なイメージがあります。 彼が脚本を手掛けた映画『 グランドピアノ 狙われた黒鍵 』も観てみたいですね。
『 セッション 』予告編
本作でデイミアン・チャゼル監督と初タッグを組み、後に『ラ・ラ・ランド』(2016年)で アカデミー賞作曲賞を受賞する俊才。Whiplashでは激しくも精密なジャズスコアを書き上げ、 ドラムの打音と指揮者の息遣いが映像と完全に一体化するサウンドデザインを実現している。
バーンと扉を突き飛ばして入ってくる指揮者。楽器パートごとに音を聞かせ、 ドラムパートでアンドリューを名指しする。緊張が臨界点を超えた場で流れる Whiplashは、何度聴いても「始まり」の合図として機能する。 一曲の中で何度もテンポが変わるこの難曲の構造が、のちに師弟関係の 「ズレ」と完全に重なっていることに、二度目の鑑賞で気づく。
「速い、遅い」と怒鳴り続けるフレッチャーの前で、アンドリューは手が血まみれに なるまで叩き続ける。ここで流れるスコアは激しいドラムの打音と表裏一体で設計されており、 音楽なのか効果音なのか、境界が溶ける。限界を超えることへの恐怖と快楽が 同じ音で表現されるシーンとして忘れられない。
フレッチャーが仕掛けた罠の中で、アンドリューがドラムを叩き始める。 曲はジャズのスタンダード『Caravan』。演奏が続くうちにドラムソロへ突入し、 カメラが二人の視線を何度も往復する。9分間が終わったとき、二人の関係が 何に変わったのかは、言葉では説明できない。音と映像でしか伝わらないものが、ここにある。