『しあわせのパン』
〜しあわせを音にするとこうなる。これはもはやASMR作品と言わざるを得ない〜
キャスト
* 水縞 尚 役:大泉洋さん
* 水縞 りえ 役:原田知世さん
* 未久 役:森カンナさん
* 洋貴 役:平岡祐太さん
* 陽子 役:光石研さん
* 香織 役:八木優希さん
* 阿部 役:中村嘉葎雄さん
* 時生 役:あがた森魚さん
監督
* 三島有紀子
音楽
* 音楽:安川午朗
主題歌
「ひとつだけ」矢野顕子
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映画を観終わった後、何が一番印象に残ったかと聞かれたら、私は迷わず「音」と答えると思う。
パンの映画だから、美味しそうなパンが印象的なのは当然だ。
北海道の美しい風景も素晴らしい。
でも、この作品が本当に丁寧に描いているのは、その間に流れる音だった。
生地をこねる音。
包丁で切る音。
コーヒーを淹れる音。
薪が燃える音。
雪の降る音。
どれも決して大きな音ではない。
むしろ、普段なら聞き流してしまうような小さな音ばかりだ。
それなのに、この映画ではその一つひとつが妙に心地よい。
気がつくとストーリーを追うというより、その空間に耳を澄ませている自分がいた。
現代は常に何かの音で溢れている。
通知音。
動画。
テレビ。
SNS。
静寂すら贅沢になってしまった時代だ。
だからこそ、この映画の静けさが沁みる。
登場人物たちは多くを語らない。
大げさな演出もない。
泣かせようともしてこない。
その代わりに、パンを焼く音や食器の触れ合う音が、人の気持ちを代弁してくれる。
言葉にならない寂しさも。
誰かを想う優しさも。
人生を少しだけ前に進める勇気も。
すべてが音の中に溶け込んでいる。
観終わった後、不思議と心が落ち着いているのは、感動したからだけではない。
きっと2時間近く、優しい音に包まれていたからだろう。
この作品は「観る映画」というより、「耳で味わう映画」なのかもしれない。
パンの香りは画面の向こうから届かない。
けれど、その音だけは確かにこちらまで届いていた。
そして気づく。
しあわせとは、大きな成功や劇的な出来事ではなく、
パンをこねる音だったり、
コーヒーが落ちる音だったり、
誰かと同じ空間で過ごす静かな時間の音だったりするのかもしれないと。
『しあわせのパン』は、そんな当たり前だけれど、忘れがちなことを、優しい音で思い出させてくれる作品だった。
静かな夜に。
できればスマホを遠ざけて。
そして少しだけ音量を上げて観てほしい。
きっと、この映画の本当の主役が誰なのか分かるはずだ。
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- 劇伴
- 安川午朗
- 主題歌
- ひとつだけ(矢野顕子)
- 主題歌
- ひとつだけ(忌野清志郎)